「マ、マヒロ先輩! 今の話聞いてたんですか?」


あたし達のテーブルの横で立ったまま、うんうんと頷いているのは、マヒロ先輩。

同じく『オカルト研究会』のメンバー。

カジ君と同じ4年生。


「マヒロ先輩、バイト中なのに……。仕事してくださいよ! 仕事!」


ここマシェリはマヒロ先輩のバイト先なのだ。

もちろん今も仕事中。


「あ。人聞き悪い事言うなよ。オーダー取りに来ただけだっつの。つか、お前らさっきからうるせーよ」


「ツッチーじゃないってどういうこと? お前、何か知ってんの? あ、オレ、アイスチャイね」


カジ君がマヒロ先輩に尋ねる。


マヒロ先輩は、オーダーを伝票に書きながら話す。



「オレもそん時ちょうどトイレ行ったんだよ。そしたらトイレの前でツッチーが寝てた。『風邪ひくぞ』って何回もゆすって起こそうとしたんだけど、アイツ起きなくてさ。しょうがないから、そのまま放置して、トイレ入ったんだ」


マヒロ先輩の話に、みんなが耳を傾ける。


「で、問題のタオルケットなんだけどさ……。オレがトイレ行く前は、たしかにツッチータオルケットを抱えてたんだよ。でも、出てきたら……もうなかったんだ。タオルケットが」


「つまりそれって……」


ケイちゃんの言葉にマヒロ先輩は、うんと頷いた。


「オレがトイレに入ってる間に、誰かがツッチーからタオルケットを取ったってことでしょ? ツッチーは熟睡してたから、その間に目覚めたとは考えられない」


「ようするに……」


ケイちゃんがまるで事件の謎を解く探偵みたいにマヒロ先輩の言葉をまとめた。