この人って、噂話とか大好きなんだよね。

絶対この人にだけは言いたくない。

そう思っていたその時。


「ナギがツッチーにキスされたんですよ!」


――ゴンッ

あたしはまたテーブルで頭をぶつけた。


そして「この口か、この口か!」って今度は口に出しながら、ケイちゃんの頬を左右にひっぱった。

ホント油断ならない……。

ケイちゃんには秘密にしておきたいことは絶対話さないでおこう。

そう心に誓った。


「マジで? ツッチーってナギのこと好きなの?」


大野先輩が目をキラキラさせてはしゃいでいる。

ああ……。

これで明日には、サークル内の噂になってんだろうな。

話に尾びれがたくさんくっついて。


「違いますよ。そんなんじゃないんです! ツッチー酔っ払ってただけなんですよ!」


もうこうなったら、ヘンに隠さない方がいい。

そう思ったあたしは、大野先輩とカジ君にも昨日の出来事を簡単に説明した。

寝ている部屋に誰かが入ってきて、キスされたってことを。



「ふーん。でも、それ……ツッチーじゃないと思うよ?」


ふいに頭上から声がして、みんなが一斉にそちらを向く。