「いや、俺と部屋に二人きりでも緊張しないってことだな」

 くつろぎまくりじゃねえか、と愚痴られる。

「いいことじゃない。
 緊張するような相手とは長く一緒には居られないわ」

「それ考えたら、俺と梨花は最初から合わなかったんだな。
 いつ、あいつがキレるかと思って、いつもビクビクして、機嫌を窺ってたから」

「それ、付き合ってて楽しいの?
 っていうか、なんでその状態で付き合えるの?」

「だって、梨花、いい女じゃねえか。
 性格はともかくとして」

 おいおい。

 でもまあ、亮太は、少しきついくらいの女が好きなんだろうから、それはそれでいいんだろう、と思う。

「お前は専務と居て、緊張しないのか」

「んー。
 最初は緊張したし、今もときどきするけど。

 でも、一緒に寝てると落ち着くっていうか」

「……なに急にのろけてんだ」

「ああ、違うよ。
 ほんとにただ寝てるだけ」

「専務にとって、お前はマスコットなんだな。
 っていうか、ライナスの毛布?」

 ライナスの毛布とは、それがないと安心できないものの例えだが、そこまでではないような。