もう、帰ろうかな
お店もそのままにしてきちゃったし
ふらふらと力の入らない体を立たせようとした
その瞬間──
「…………詩桜?」
え、この声…
「優真、君?」
って、そんなわけないか
ついに私幻聴まで聞こえるようになったのかな
ふふっと思わず苦笑いがこぼれた
「詩桜!!」
その時肩を誰かに掴まれた気がして
一瞬、目の前がグラっと揺れた
そしてピントが合うと
目の前にいたのは
「優真君…?」
優真君だった。
うそ…こんなことって…
「お前こんな格好で何してんだよ
風邪引くだろ」
少しだけ苛立ったような優真君の声
「本物だ…」
「…は?」
「うぅー…」
「は?あ、お、おいっ何で泣いてんだよ」
優真君が今ここにいる
女の子の涙に弱いところも
頭を撫でてくれるこの手も
気持ちを伝えることは苦手だけど
今みたいにさりげなくコートをかけてくれる
不器用な優しさも
…ほんとに好き
「優真君、あの…………っ!」
伝えなくちゃって頭を上げると
私にあわせてしゃがんでくれていた優真君
だから思ったよりもかなり近いところに顔があって
そのキョリはわずか20センチ
「…………っ」
「……………」
──ドキッ
見つめ合う目と目
胸が早鐘を打って
頬に熱が集まる
目が逸らせなかった
「わりぃ…」
だけどその空間に終止符を打ったのは優真君だった

