にじいろ

「杉浦くん、帰ろ」
勇気を出した。
帰ろうとしていた杉浦くんを、下駄箱で引き留める。
「うん」
杉浦くんは、明るく笑った。

「……」
「……」
久しぶりの帰り道。
会話は続かなくて、足音だけが聞こえる。
「あのさ」
「?」
杉浦くんが話を切り出した。
「別れよ!」
「え……?」
いきなりそんなこと言うなんて、ドストレートにも程があるよ。
言葉が浮かんでも、声には出せない。
「俺、知ってた。ことはちゃんが高瀬に会いに行ってるって」
「知ってたの…?」
「…うん。たまたま屋上に行ったら、二人がいて、ことはちゃんが屋上に行く姿を何回も見た」
知ってたんだ。私が、高瀬くんに甘えていたこと。
「ことはちゃんが俺から逃げたとき。ことはちゃんを支えられるのは俺じゃなくて、高瀬なんだってわかった」
「そんなっこと…」
「抱き合ってたのも、俺、見たんだ。」
「っ…」
声が、出ない。
「高瀬の方が、ことはちゃんを支えられる。って思った。だから、別れよ!」
杉浦くんは、わざと明るく言ってくれたんだ。そんなの、すぐにわかるのに。
杉浦くんの手が震えていたことも、わかったのに。
「ごめんなさい…。」
私は、高瀬くんに惹かれてた。
これは、揺るぎようのない事実だった。