入学したばっかりの春。

今でも覚えてるよ。

ほんのり甘い香りがして、少しだけ幸せな気分になれた。

辺り一面ピンク色でさ、あいつは喜んでたけど、男の俺からしたら言うほどでもないし。

まあ、そういうところを見ると、やっぱり女の子だなあ、とか。

ほんのちょっとだけ、かわいいなあ、とか。

まだぶかぶかの制服を着て、桜並木を歩いたよな。

俺が君のほうを見ると、君はそれに気づいて笑いかけてくれて。

そのふわりと笑った顔が忘れられなくて。

「一緒のクラスになれたらいいね」

なんて笑顔で言われて、顔を赤くしたっけ。

一緒のクラスだって分かったときはすごい喜んでたよな。

席は離れちゃったけど。

でも、次の席替えで少しだけ近づいて。

君はすごく嬉しそうにしてた。

俺だって、内心すごく喜んでた。

昼食は、俺がいつも購買のパン食ってるって知ったときは、私が作ってあげる、なんて言われてさ。

しょうがねえから食ってやる、とか言ったけど、かなり楽しみだった。

あいつの作る弁当はすごくうまかった。

いい嫁さんになれるな、とか言ってやると、そうかな、とか顔を赤くして言うし。

でも、その料理を将来他の男に作ってやるのかなって思うと、胸のあたりがモヤっとして。

その表情を他の男に見せるのかなって思うと、また胸のあたりがモヤっとして。

今となっては、完璧に嫉妬してるな、って笑える話だけど。

その頃は全然わからなくて。

「変なの」って心の中で呟いたりした。