願いの欠片


それからすぐに、君は私が静かに置いたそれへと手を伸ばし、はいと低く甘く、わずかに掠れた大好きな声で、後ろの席の女の子へと手渡すのだけど。

それを知っているからといって。

前をみて、なんてことない振りで手元へと視線を落とす私は、それを受け止めなくてはいけない。

その声が、大好きな音がたとえ耳へと届いたからといって。

その度、胸の中がぐちゃぐちゃに塗りつぶされていっても、身を震わせて、背中から君にそのことを伝えてはならない。