流雨の席は、窓際の一番後ろ
私の席は、真ん中の列の一番前
チャイムの音が、ぼんやり耳で反響して。
流雨の控えめな案ずる声がやけに遠く感じる。
「…へーきっ!」
笑顔だけを、張り付けて。
大きく弧を描くように、遠回りをしてから。
悠介の前の、自分の席に腰かける。
「おはようっ」
明るく声をかけてくるのは…沙月。
吹奏楽部で、同じフルートを担当してる私と沙月は仲がいい…の。
もちろん、振り向いたところに当たり前のようにいる、悠介
何時ものように、私の瞳を避けて斜め後ろに視線を投げる。
ちくりと針で刺された痛みと沙月に対する思いは、決してまぜこぜにしてはいけないもの。
…わかってる。
………頭の奥からわかってるから、切ないんだけどね。


