ひとしきり、泣き終えて、私は最後に渡された手紙を開いた。



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桜湖へ

私がこの手紙を書いたってことは、もう天使になっちゃったかな?
天使の話、覚えてる?
私が小さい頃おばあちゃんから聞いたあの話。
「人は死んじゃったら天使になって、もう一度人間になりたいですって神様にお願いするんだよ」っていうやつ。
私ね、成長するにつれて子供騙しだと思ってた。
でもね、嘘じゃないかもしれない。
なんとなくそう思ったんだ。
それに、なんかロマンチックだし?(笑)

さてさて、今から本当に伝えたいことを書くね。
私、桜湖が大好き♡
桜湖が思ってる以上に愛してます♡
桜湖は、私と違って、可愛くて優しくて性格よくて…
まさに憧れだった。
そんな桜湖に私のことも可愛いって言ってくれた時、毎回そんなことないってはぐらかしてたけど、本当はすっごい嬉しかった。
いわゆる照れ隠し的な。
桜湖にはバレてたと思うけど(笑)

私さ、病気になった時はものすごく怖かった。
寝るときなんてもっと怖かった。
もう目を覚ますことができないんじゃないかって考えちゃって…
ほら、私って悪い方向ばかりに考えちゃう癖あるからさ…
なんで私なんだろう、他の人じゃダメなのかな、って何度も何度も思ってた。
だけど、神様は私にもっと友だちを大切にしなさいって思って原因不明の病気を患わせたんだって思うことにしたの。
じゃなきゃ、私がやっていけなかった。
そんな時に、桜湖がいた。
私にとってとてつもなく大きな存在だった。
そして、とてつもなく温かかった。
どれだけ弱ってても変わらない態度で接してくれて、ずっと傍にいてくれて、本当にありがとう!
こんなんじゃ全然足りないけど、ありがとう以外に言葉が思い浮かばないや(笑)

この手紙はね、私がたっくさん伝えたいことがあったから、字がまだ綺麗に書けるうちにって思って書いたんだ。
なんか、一気に体調悪くなるって悟ったからすぐに手紙を書き始めた。
そしたら本当に次の日から悪くなっちゃったよ。
手から物が落ちた時も、手が滑ったんじゃない。
力が抜けたの。
でも、桜湖に心配かけたくなくて、大きな重荷背負わせたくなくて言えなかった。
もしかして、これも気づいてたかな?

私、めっちゃくちゃ人生短くて、これから楽しいことたくさんあるのに、病気になんてなっちゃってすごい悔しかった。
だけど、ものすごく幸せだった。
それは、私が私であって、私には桜湖っていう1人の人間がいてくれたから。
ありがとう、桜湖。
私が世界一の幸せ者になったから、次の世界一の幸せ者は桜湖がなるべきだよ。
私は神様にお願いして、もう一度人間になる。
そして、また桜湖と出会うから。
来世こそは大好きな人とともに長生きするんだから!
私の大切な大切な桜湖が、世界一の幸せ者になれるように見守ってます。
だから、どうか、たくさんの幸せが桜湖の元に降り注ぎますように…
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私はこの手紙を読んで、止まったはずの涙がまた溢れ出した。



照れ屋なのも知ってたし、手に力が入らなくなったことも知ってた。



全部って言っていいほど知ってたはずだったのに…



それなのに、どれだけの怖さで毎日を生きてきたのかは、私には計り知れないものだったのだろう。



私こそありがとうなのに…