「まあ俺だって出来ることなら
篠崎の特別になりたいけど、

俺が篠崎を好きなように
篠崎にも好きな人がいるわけだし、

無理強いしても、って思って」


「あんた相変わらずさらっと甘いこと言うねぇ」


恥ずかしげもなく言ってのける功太くんを見て里佳は持っていたお弁当のウインナーを口に運ぶ。


「でも篠崎がどうしようもない位傷ついたりしてたら遠慮なくまた攻めるけどね」

「あんた一見草食に見えて立派な肉食だよね」


2人で意見を言い合ってて
なんだか気が気じゃない。


「ユメ?
あんたが最近ずっと悩んで
元気なかったのも知ってたの。

でも全然相談してくれないから
私も何も出来なかった…。

ユメが柊先生を意識してるのわかってたから、あの時釘だって刺したんだよ」



【教師と生徒なんて問題じゃん?】


「…あの時の言葉は、
私を思っての言葉だったの?」



思いがけない言葉に
驚きを隠せなくて声が震えてしまった。

里佳は静かに頷くとそんな私の手を強く握ってくれた。



「ユメ、ほんとに覚悟できてる?

恋人になれたって、
いつも人目を気にしなきゃならないんだよ。」



「…うん」


そして私も
しっかりと里佳の手を握り返す。




「外でデートなんて
全く出来ないかもしれない」


「うん」


「ただ遊ばれて
捨てられるだけかもしれない」


「…うん」


「先生の事
それでもそんなに好き?」


「…うん。好き」



ひとつひとつ、
頷いていくと同時に


いつの間にかこんなにも陽一の存在が自分の中で大きくなっていたんだと



改めて実感した。