「頭痛薬、風邪薬、
陽一何も持ってなさそうだもんね」


自宅に戻って救急箱から薬を取り出し小さな袋に入れ換えて、
静かな部屋でひとつため息を吐いた。




陽一が私のことからかっているだけだって初めから分かっていたことなんだから

簡単に傷つく自分がダメなんだよ。



陽一が私を好きじゃなくても

私が陽一を好きなんだから。

期待したら傷つくだけなんだよ。



「……よし!
とりあえず薬だけは持っていこう」


見繕った薬を持って陽一の部屋に行くと玄関の鍵が開いていることに違和感を感じて。



「陽一?
玄関開いてて物騒だよ…?」



遠慮がちにリビングに入ると
ソファの上でぐったりと寝ている陽一を見つけた。


「陽一!?熱すごいじゃん…!
こんなとこで寝てたら悪化しちゃうよ……」



すぐに駆け寄って周りを見渡すと
ノートパソコンやテスト用紙が散乱していて。


こんな状態でも帰ってきてすぐ
仕事を始めていたんだろうか。


「……ベッドで横にさせないと……」


寝室に連れて行こうと自分の肩に陽一の腕をかけて運ぼうとしても重くて持ち上がらない。


…どうしよ…


「…ユメか?」


気が付いた陽一は、
私から離れると辛そうにソファーに座った。


「帰れ。風邪が移る。
こんなんすぐ治るから....」


そういったのも束の間、
またぐったりと目を閉じてしまった。


こんな陽一見てられない…!


「…ちゃんとお布団で寝ないと
良くならないよ!!」



そして再び陽一の体を支えて、
なんとか寝室に運び込んだ。