喫茶店でしばらく気持ちを
落ち着かせたあとマンションに帰ると
ちょうど一台の車が駐車場に入ってきた。



「お前も今帰りか」


「…陽、一」



その中から出てきたのは陽一で
驚いて変な声が出てしまった。


陽一が好きだと認めてから
初めて顔を見る。



恥ずかしくてどんな顔をしたらいいのかもわからなくて
足早にエレベーターに乗ってボタンを押した。



「デートにしては帰り早いな
喧嘩でもしたか?」



静かなエレベーターの中で
何気なく放たれた陽一の言葉に
私の心は簡単に傷ついて


「そんなんじゃないよ!
陽一だってデートだったんじゃないの!?」


素っ気なく反論してしまった。



陽一は私がまだ将人と付き合ってると思ってるんだからデートだと思うのは当たり前なのに。


やっぱり、別れたことを
陽一に伝えるべきなんだろうか。




「陽一あのね……」

「まー俺はデートっていうか
朝帰りみたいなもんかな」



頑張って伝えようとした私を遮って、
陽一が言った言葉に頭の中が真っ暗になった。



「……誰と……?」


「そんなことより、
お前頭痛薬持ってねぇ?

昨日から頭いてぇんだよな」



勇気を出して聞いた質問も
答えることなく、
エレベーターを降りた陽一は
そのまま自分の部屋に入っていった。



「…ばか」



陽一は私のことなんて
なんとも思ってないんだ。


そんな事わかってたけど
こんな風に思い知らされると
やっぱり悲しくて


一人泣きそうになった。