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「……ひっく…うっ」



夕方の公園のブランコを漕ぎながら
一人の少女が泣いている。


「おーユメじゃねぇか。
またこんなとこで泣いてんのか」


「…陽兄ちゃん」



陽一は隣のブランコにドスンと座ると
ユメの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。



「だってアイツらどんだけ言っても
将人いじめるのやめないんだもん。
なんであいつら将人ばっかり…」


ユメが悔しそうに涙をためた瞳で
陽一を睨みつけた。


「まぁあれくらいの年じゃ
しょうがねぇ事だけどな」


「 どーゆうこと?」


「将人いじめる奴は
お前の事が好きなんだよ。

だからいつも一緒に居る将人に
腹が立つんだ。

まぁお前ら位の歳じゃ
素直になれねぇだろうしな」


「それじゃぁ、
…私のせいなんだね」


陽一を見つめていた視線を外し、
溜め息を立てうつむいた。

それを見た陽一はユメの腕を掴むと
そのまま背負って歩き始めた。



「別にお前のせいじゃねぇよ。
将人の問題だ。

おまえの側に居たいんだったら
いつまでもお前に
守ってもらうだけじゃなくて
自分で戦わないと駄目なんだよ。

男なんだから。
お前はそのままでいいよ」



陽一にそう言われると
ユメの瞳からは大粒の涙が
ボロボロと溢れ出した。


「ありがと。…陽兄ちゃん」



陽一の言葉に安心して
背負われたまま深い眠りについた。




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居心地のいい場所。

…あの時が懐かしい。


私にとって陽兄ちゃんの背中は
どこよりも安心できる場所だった。