「…さっきはゴメンな篠崎」


黙々と歩き続ける私の隣で功太くんが呟いた。


「軽い気持ちで言っただけなんだけど…
彼氏がいる子に言う発言じゃないよな」


過剰に反応して勝手に怒っちゃった私が悪いのに功太くんは本当に優しい。


「ううん、
私こそごめんね」

「本当は彼氏が居ても
俺を意識してくれたら嬉しいんだけど」



「………え?」


いきなりの言葉を理解できずに
戸惑う私を真剣な表情で見て
「なんてね。」と笑った。

…からかわれた!?



「それにしてもこの辺
昨日の雨でぬかるんでるな」


…カターン


足場の悪い道の途中で、
私のスマホがポケットから抜け落ちてしまって、


「大丈夫?
俺が取ろうか?」

「ううん、平気…」



何気なくスマホを拾った瞬間だった。




……ズルっ


ザザザザザザ……!!!



「篠崎!!」


ぬかるみに足を取られた私は

そのまま下の方へと
一気に滑り落ちてしまった。