バタバタ…



「ただいま!

陽兄ちゃん来てる?」



玄関を勢いよく開け、リビングに入るとソファに寛ぐ陽一の姿があった。



「お前ら今日も遅刻か!
折角俺が無償で家庭教師してやってんのに」



陽一は二人の頭をぐしゃぐしゃと撫で、そのままふたりを抱き抱えると、ユメの部屋に入って行った。



「はい今日は算数の教科書をだせ。」



「はぁーい」




ユメ、将人、陽一の三人は同じマンションの隣同士の部屋の幼なじみで、高校三年生の陽一が忙しい両親の代わりに二人の面倒を見てくれていた。



髪の毛を金髪に染め、長身で切れ長の目、更に口も悪い陽一だったが、ユメと将人は根は優しい陽一によく懐いていた。