「あっ!やばい!
提出期限が今日までの課題出すの忘れた!ごめんユメ!すぐ帰ってくるから待ってて!」

「え、私も行くよ?」

「いーのいーの!
積もる話もあるでしょ?
ここで待ってて!」


いきなり立ち上がった里佳は
そのままバタバタと慌ただしく
私を部屋に残して去っていってしまった。


「おもしれぇ友達だな。」


クスクス笑う陽一からは
昔の面影が垣間見て思わず目を奪われた。



静まり返った部屋の窓の外からは生徒たちの声が聞こえてくる。



「……運ぶ物はどれですか?
人を待たせてるので早くしてください」


二人になってからの沈黙が苦しくて、
椅子から立ち上がった。


早くここから出ていきたい。



「なんだ将人待たせてんのか?
お前らが付き合いだしたなんて、世も末だな。」



陽一は棚に無造作に立てかけてあった教科書とポスターを取ると私の前に立ちはだかった。


「?
先生、
その教材を貸してください。
持って行くんで」


教材を奪うように取り背を向けて部屋を出ようとした瞬間、

後ろから抱き着かれその衝撃でポスターがバサバサと地面に落ちた。


「ちょ、やめてください!」

「期待してるように見えたんだけど?」


「そんなわけ…っ」


私の体を強く抱きしめると、
陽一はこの前のようにキスで唇を塞いだ。


「や…っ……」


羽交い締めにされている身体は身動きがとれなくて
全ての神経が唇に集中していく。



教室の外からは生徒の足音や話し声も聞こえる。

もしもここに生徒が入ってきたらどうなるんだろう。

それが物凄く怖くて
身動きが取れなくなった。



「……ばーか」


大人しくなった私を見て気持ちを察したのか、陽一はもう一度唇に触れるだけの優しいキスをした。