憧れの彼は

今日も響くコツコツという足音。

もうすぐ彼がとすれ違います。

あれ?まだかな?

そう、振り向いた瞬間、雨でぐちゃぐちゃした枯葉に滑り、こけてしまいました。

視界の先には彼が。

地面に手を着く私。

「ごめんなさい、佐々木くん…。こけてしまって、邪魔でしたよね?」

とてと不安です。いつもギリギリなのに、私が目の前でこけてしまったので、止まるハメに…

「大丈夫。立てる?」

君の瞳をこんなちかくで見たのは初めてです。

とても澄んだ綺麗な黒い瞳。

「は…い」

思わず逃げてしまいそうです。そんなにまっすぐ見つめないでください。

「可愛いね、綾野さん」

なんで、私の名前を…?

「いま、なんで自分の名前を知ってるの?って思ったでしょ?」

微笑みながら佐々木くんがいいます。とても優しげ。

「はい」

「ならさ、なんで僕の名前、知ってるの?」

…っ。それは君が好きだから。そんなことは言えるはずもなく…

「うううっ…」

黙ってしまいます。なんて言えばいいのでしょう。

「ま、いいや。いつか言わせるからね。あと、僕が君の名前をしってる理由も」

佐々木くんの瞳は少し意地悪そうに光りました。

「明日から僕、10分早く来るから。君も来てくれるよね?一緒に行こ。」

まったく、君は何を考えているのです?さっぱりわかりません。私をもてあそんでいるのですか?

「…」

はいって言いたいですけど…

「え、来てくれない?」

彼の瞳が寂しそうです。困ります、そんな顔されたら…ううう…

「わかりました」

恥ずかしいです…