ビオラ、すずらん、年下の君



「馬場友さん、あの人な、前から評判良くないんだよ。架空の契約でっち上げて、クビになりかけたのに社長に土下座して泣きついて、たまたま空いていた俺のポジションに治まったっていう経緯もあるし」


「ええ…そおなの…」


私は明太子パスタを巻き付けたフォークを宙で止めた。


わ、ひどい…これじゃあの職場はダメ人間収容所じゃんーー


「なんとかしてやりたいけど、俺、もう部外者だから、社長に待遇改善を要望するのも難しいな…佐原さんが直訴するのが1番だけど、その後がやりにくくなるかもしれない」


羽田さんは、あつあつのビーフシチュー・セットを前に腕組みをして、うーん、と唸った。


「ああ、こんな感じが続くんだったら、私もう会社辞めたいな…」


明日会社で、馬場友のあの年取ったボヤッキーみたいな顔を見るのがホント憂鬱…元々嫌いだったけど、今日の件でさらにイヤになった……私はふう、とため息をついた。


「辞めてもいいよ」


「ん?」


羽田さんの眼鏡の奥の瞳が、まっすぐに私を捉える。


「もう無理して続けることねえよ。働きたかったら、うちの会社で事務やれば?子供出来るまでとか」


「こ、子供?」


パスタがのどに詰まりそうになって、私は胸を叩いた。