「今日は夏祭り。あとで老人会に顔を出さんといけませんな。稲子さん、行きますか?」
「ええ。行きますとも。行かないとあとが大変ですものね」
稲子が意味有りげにフフ、と笑う。
うん、そうか。老人会にも、いろいろ複雑なアレコレがあるのね。
「そういえば、和香子ちゃん!」
稲子さんが、パン、と手のひらを打った。
「私、いいモノ見つけたのよ。ちょっと待ってね。見せてあげるから。昨日、箪笥を整理してて見つけたのよ」
嬉しそうに言った後、いそいそと奥へ入って行く。いかにも働き者って感じは爺ちゃんのツボだ。
「稲子さんは本当に忙しい人だなあ」
そう言って愛おしげに見守る感じは、まさに恋する男の目。天国の亡きおばあちゃん!25年も男やもめを続けているのだから、許してあげてね。
「あ、和香ちゃんも一緒に夏祭り行くか?」
「ヤダ」
即座に私は首を横に振った。
小さな町内会のお祭りなんて行くのは高校生までだ。
昔はたくさん屋台も出たものだけど、商店街の衰退とともに減っていって、当時の賑わいはない。
「あれ?それにしても稲子おばあちゃん…全然戻って来ないね?」
「おう、どうしたかな?」
爺ちゃんが首を伸ばして、母屋の方を覗き込む。

