でも、それだけじゃなくて礼儀正しくて天真爛漫なところもあるってことが、
1枚1枚薄皮を剥いでいくように分かってくる。
大きな目をクルクル動かして、いろんなものに反応するとこがいい。で、俺のちょっとしたことにも。
「吉田君てば、さっき、なんもないところでつまずいたでしょ?」
エスカレーターで後ろを向いてクスクス笑いながら言う。俺も笑いながら応戦。
「見てんなよ、一瞬、足首がガクってなっただけだよ、うるせえな」
「あー、私も!足首ガクってよくなるなる。コケそうになる!」
「あ、おい!前見ろ」
「え?」
エスカレーターを登り切ったところで、袴田の身体がクラリと揺らいだ。俺は瞬時に袴田の身体に右腕を回し、転倒を防いだ。
俺たちの身体が一瞬密着したけれど、袴田の方からパッと離れた。
「ああ、危なかった!ごめん!吉田君、足首大丈夫だった?」
笑いながら謝るなっつーの。でも、こいつの伸びやかさは一緒にいる者の心を軽くする。
袴田の周りにはいつも誰かがいるのがわかる気がした。
そして、生真面目さ。
タダチケットのお礼にポプコーンとドリンクを奢るよと言っても、袴田はガンとしてうけいれなかった。
「付き合ってもらったのは私の方だから」と言って。

