ビオラ、すずらん、年下の君



「だから、早く言えよ。相談て何?」


「…あ、あの…」

下を向いたままの顔がトマトみたいに真っ赤になった。


「もらいもの映画のチケットがあるんだけど…今週の金曜日までなの。あずみと約束してたのに、あずみ、用が出来ちゃって。で、吉田君いけないかなって。

この前、友達としてならいいよ、って言ってくれたよね?先約あるの?」


「あー…ないけど」


だからって、これはちょっと……
暇だけどさ…
なんて断ろう、と言葉を探していると。


「用がないなら、お願い!1人で行くのは嫌なの!ただ一緒にいってくれるだけでいいから!お願い!」


目をギュッ瞑って俺を拝むようにする。いつもクールな袴田が、こんなに必死になるなんて…


「…じゃ、行くかな」


断りきれないってこういうことだろうな。ま、いいか、映画に付き合うくらいなら。


「やったあ!ありがとう!」

お祈りするみたいに胸の前で手を合わせ、長身をオーバーに揺らして大喜びする。


「じゃ、詳しくは明日!」


ツヤツヤした髪のポニーテールをクルリと翻し、まるで逃げるみたいに俺の前から立ち去った。俺の気が変わるのを恐れるみたいに。