授業が終わり、
昼がやって来た。
屋上に行くと
佐原 蓮司はもう来ていた。

「よっ」

手を上げてこちらに言った。
私も少し挨拶をして
ベンチに座って弁当を開く

そして弁当を食べながら聞く

「先輩、熱はもう
大丈夫なんですか?」

先輩はこちらを見て、
コクンと頷いた。
そしてパンを
食べながら

「お前さぁ、
俺の名前言わないよな」

そう言った目は
少し悲しそうだった。
そう言えば佐原 蓮司を
他の人が呼ぶ時、
〝先輩〟と呼ぶのは
聞いたことがない。
佐原か蓮司のどちらかが
必ずついている。

「呼んで欲しいんですか?」

私が聞くと先輩は少し
ビクッとなって

「い、いや、別に
そういうわけじゃねえよ?
ただ、呼ばねぇなぁって
思っただけだし。」

佐原 蓮司はそう言いながらも
すごく言って欲しそうだった。

「れ、蓮司…先輩」

少し詰まったが、言えた、
また顔が赤くなる。
私自身、男の人を名前で
読んだことなど無いのだ
詰まって当然だろう。

「へへ」

佐原 蓮司は照れ臭そうに
パンを食べていた。

「先輩…今朝の先輩は
何かおかしかったですけど
何だったんですか?」

私が聞くと蓮司先輩は
手を止めうつむいた。
少し体が震えている。

「言えないことなら今は
聞きませんよ。」

そうゆうとこちらを向いた。
先輩は泣いていた。
だが泣き虫の時の
涙ではなかった。
何かに耐えるような、
そんな涙だった。

「いつか言うから。」

そう言ってまた、
パンを食べた。



学校が終わり、
家に帰って写真を見る
言えないことなら
私にもあるじゃないか

私の家族は、
義母、義父、義姉だ。
私には父と母と兄がいた
私が小さい頃、
父と母を亡くし
その後兄も亡くした。

いじめの原因はこれなのだ。
私に近づくと死んでしまうと
言い出した人がいて、
それが原因で
いじめられるようになった。

蓮司先輩はこの事を知らない
もし知ってしまったら
どうなってしまうんだろう。