映画館に入ると
真ん中の方の1番
見やすい席に座って
始まりを待った。
先輩は私の左に座る。

「うま」

そう言っている先輩と
私はポップコーンを
むしゃむしゃと食べている。

でも私は会話できないから
食べてるだけだ。

そして美味しい。

するとブザーのような
〝ビーーーー〟
という音と共に
館内が暗くなった。

映画が始まる。
私は映画を見る
先輩の横顔を見ながら
たまに映画を見た。

「ん?」

と言って先輩もこっちを見た。
慌てて目をそらす。
私が下を向いていると
肘をついていた私の左手に
先輩の暖かい手が重なった。

「あ、あの…」

先輩を見ると先輩は
映画の光を浴びていても
分かるほどに真っ赤に
していた。
それを見てまた下を向いた。

映画が終わるまで
胸の音が収まらず、
途中から映画の内容も
分からなかった。

映画が終わって外に出る。

「面白かったな!」

笑顔で私を見てそう言った。

「…はい。」

私の心臓は未だに高鳴っている。

だって手…つないだままだし。
外に出るともう夕方だった。
手をつないだままに
帰り道を歩く。

そして分かれ道が来た。
繋いでいるこの手を
もう少し離したくないな。

「今日は本当に
ありがとうございました。」

私が言うと先輩は

「いや、送っていくし。」

と言ってくれて
少し嬉しくなった。

もう少し手を繋いでいられる。