私と蓮司先輩が最初に
向かったのは映画館、
ではなく喫茶店だ。

上映される時間が少し遅いから
そこで時間を潰す。

映画館は私が学校の帰りに
たまに行く路地の近くにある。
そして喫茶店はその近くだ。

学校に行く道とほぼ同じなので
迷うこともない。

蓮司先輩はいつものように
話しかけてくれている。
慣れているのかな。

私も同じように話す。

平常心を装って。

先輩は学校の話をしている。
私の服装については
なにも言ってくれない。
やっぱり、変なのかな。

まぁ、別に褒めることでは
ないでしょうけどね?
そんなこと褒めたって
何もならないし。
でも、いいじゃないですか!
可愛いとか可愛くないとか
変とかおかしいとかっ
少しくらい何か言ってくれたって
「いいじゃないですかっ」

しまった…つい心の声を
声に出してしまった。
先輩は驚いて立ち止まって
こっちを見て言った。

「………え、どした?」

幸い辺りに人はいなかったが
それでも恥ずかしすぎる。
私は真っ赤になった顔を
両手で隠して言った。

「な、何でもないですっ」

先輩は「そうか」と言って
また歩き出す。

少し歩いていると
目的の喫茶店についた。

実は私は喫茶店に
1度も来たことがない。
だから今回が初喫茶店だ。

カランカラン

ドアを開けて喫茶店に入る。
朝だからだろうけど
人はあまりいない。
でも暖かいしいい匂いがするし
いいところだ。

私と蓮司先輩は1番奥から
二番目の席に向かい合わせに座って
先輩はコーラ、私は
オレンジジュースを頼んだ。
炭酸は…苦手だ。

「さっきのなんだったんだ?」

先輩が半笑いで言った。

「い、いや、その…えっと…
……」

私はかなり詰まったが
詰まった後にさっき
思ったことを先輩に話した。
服のこと、化粧のこと。

「………」

先輩は黙って目をそらして
真っ赤にした顔を両手で隠した。

「わ、笑っていいですよ…」

私は言うと先輩は手を少し下げて
目だけ見せて言った。

「ごめん。」

「なんで謝るんですか?」

私が言うと先輩は
手を下げて赤い顔をだして
言った。

「褒めてあげらんなくてごめん、
服も化粧も可愛い、超可愛い、
似合ってる、最高。」

先輩は笑顔で言った。
先輩の顔の赤さが移ったように
私の顔も赤くなるのが分かる。

「あ、ありがとうございます。」

空になったコップの中の
氷が溶けた水と混ざって
薄くなっているオレンジジュースを
ズルズルと飲んで言った。

私と先輩はその後も
少し話をしてお店を出た。

ここからが本番だ。