岡野はなかなか戻ってこない。
どこに行ったのだ。
なぜウインクをしたのだ。

「なぁ、土曜日どっか
行きたいとこねぇの?
てか、もう明日なんだけど。」

先輩が言った。
そうだった。
行きたいところ…。

「先輩はどこに行きたいんですか?」

私が言う。
本当は映画館に行きたかった。
映画を見たいわけじゃない。
ただそういうデートに憧れている。
ベタかな。

「俺は…うーん、映画館とか?」

先輩が言った。
え、先輩も映画館なのですかっ
何か見たいものでもあるのかな。

「何でですか?」

「いや、別に見たい映画が
あるわけじゃなくてさ、
何か、その…憧れるっつーか。
だから、別にお前の
行きたいところでいいんだよ。」

Oh no…

「私も同じこと考えてたからいいです。」

顔を見られたくない。
赤いから。

「ん?」

先輩が私の横で言った
私はうつむいて言う。

「だからいいですっ」

「そっか。」

先輩が私の顔を覗き込んで言った。
先輩も少し顔が赤かった。

ガチャ

「はいはーいお邪魔しまぁす。」

岡野が帰ってきた。
邪魔ってなんだ。

……と言うか明日…だよね…。
わ、私、普段あんまり外に出ないから
服とかあんまり持ってないんだけど…。
どうしよう。
…岡野だな。