「先輩、あの、私は、あの
えっと…たまたま
通りかかっただけで、その、
ストーカーとかでは無いです。」

マンションの三階に
たまたま通りかかるって
どんな奴だよっっ

自分の言葉に心でつっこんだ。

「あ、はい。」

蓮司先輩が言った。
敬語だ…。
絶対引かれた…。
私は貰ったココアを
両手で握りしめた。
温い。

「あの、実は、俺も…お前の家
行こうと思ってた…ぞ。」

先輩が言った。
え…?

「何しに行こうと思ってたんですか?」

私が言った。
答えは聞きたくなかった。

「お前と…話をするため、だ。」

先輩はうつむいて言った。
でも、顔が赤くなるのが見えた。

「ごめん…俺、お前のお兄さんの
命使ってまで生きてると思うと
お前と一緒にいたらお前が傷つくと
思って…。」

蓮司先輩が言った。
それなら前にありがとうって
言ったじゃないか。

「でも、ダメだった。」

先輩がこっちを向いて言った。
私は目をそらした。

「一緒にいたらいけないと思っても
一緒に居たかったんだ。」

やめて欲しい。
そんなこと言われたら…
離れられないじゃ無いか。

「私も…です。」

どうするんだ。
先輩の命が懸かっているのに
私は空を見てココアを左手に
右手をベンチに置いた。

「そっか。」

そう言って先輩は私の右手の上に
先輩の左手を乗せた。
先輩の手は冷たかった。

「お前の手、温いなあ。」

先輩が言った。

少しの間手を重ねていると
先輩の手は私の手と
同じ温度になった。

「さて、帰るか!」

先輩はそう言ってこっちを向いて
立ち上がった。

「はい」

私も返事をして立ち上がって歩き出した。

「送ってくから」

先輩が言った。
手は繋いだままだ。
外灯と月明かりだけで
ほとんど真っ暗だ。
私が上を向くと先輩も上を向いた。

キラッ

流れ星が見えた。

「あ、流れ星っ願い事しなきゃ」

そう言って先輩は目を閉じて言った。

「ずっと一緒に居られますように。」

私はそれを聞いて顔が熱くなるのが
分かって下を向いた。
そして一つだけ願い事をした。

「お願い、した?」

先輩が言った。
先輩の方を向くと先輩も
少しだけ顔が赤くなっていた。

「したけど、教えませんよ。」

そう言って私は前を向いた。

願い事は…


____蓮司先輩と同じかな。____