「じゃあ、俺の生まれた頃から
話していく。」

先輩が話し始める。

俺は小さい頃から
心臓が悪かった。
だからみんなと一緒に
外で遊べなかった。
俺は入院してることが多かった。
だから俺はいつも漫画を読んで
アニメを見て過ごしていた。

「そして、俺はお前の兄である
現井 祐弥を知っている。」

え…?
先輩が鋭い目でこっちを
向いて言った。
お兄ちゃんを知っている?
何で知ってるんだろう。
年は近いが同じ学年ではない。
それに通っていた小学校が違う。
先輩は続ける。

俺は小学一年生の時に
寿命はが11歳、
つまり小学校5年生で
死ぬと言われていた。

小学四年生だったある日、
その日は大雨だった。
俺は病室で漫画を見ていた。
救急車が病院に止まって、
2人が病院に運ばれた。
それが現井 祐弥とその父だった。

少しして俺のところに医者が来た。

ガラガラっ

医者が俺の前に来て言った。

「君は人の命を背負ってでも
生きたいと願うかい?」

と聞いてきた。生きたいと思った。
俺はコクンと頷いた。
すると、手術室に運ばれて
麻酔をかけられて手術が始まった。

手術が終わって聞いたところ、
現井祐弥はすでに
手遅れだったらしい。
そこで母の同意により俺に
心臓を移植したらしい。


先輩は話し終わると
うつむいて涙を浮かべて言った。

「ごめんな…美穂。俺はお前の
兄の心臓を奪ってまで
生きてるんだ…。」

驚いた。
兄は事故で死んだとしか
聞いてなかった。
そんな事初めて聞いた。
涙が出てきた。
その涙が見られたくなかったから
私はうつむいた。

「今まで、黙ってて悪かったな。」

先輩が言った。
兄が生きている。
兄ではないかもしれないけど
兄の一部がまだ残っている。
本当に嬉しかった。

「いえ、言ってくれて
ありがとうございます。
それと…生きててくれて
ありがとうございます。」

声が震えた。
泣いてるの、分かったかな。
先輩が私の顔を覗き込んだ。

「ごめんな。」

そう言って先輩は
立ち上がって歩いて行った。