「泣いてんのバレてるぞ?」

俺が言うと美穂はまた
袖で目を拭いて言った。

「ぶ…無事で良かったです。」

足が折れたのに…無事だと!?
どう見ても無事じゃないだろっ
痛えよ?俺の足痛えよ?

「どこが無事だよっ足折れたぞっ」

俺が言う。
美穂の座っているベンチの
横が空いている。
このまま立ってると
右足も折れそうだから
俺も座ろう。

「心配させて悪かったな。」

俺は少しうつむいて言った。

「いえ、生きてくれて
ありがとうございました。」

え、何…死ぬと思ってたのか?
まぁ、事故って言われたら
命に関わるから仕方ないか…。
俺は少しニヤけてしまった。

「先輩、別れてください。」

……………………え?
ワカレテクダサイ?は?
えぇ、何でだ?
まずい顔に出てる…
冷静になれ、冷静になれ。

「俺の事、嫌い?」

美穂は頷いた。
こいつは俺と会ってから
1度も俺に直接〝好き〟
と言ったことがない。
言わせてみたい。
でも好きって言ってとか
気持ち悪いこと言えないし…。
よしっ

「好きか嫌いで言えば?」

こう聞けば好きって
言ってくれるはずだ。

「す、好き…です。」

ボッ
顔に火がつく。
俺は顔を押さえて
うつむいた。
よし、ここは殴られる覚悟で
もう一押し。

「じ、じゃあ好きか
大好きで言えば?」

「だ……大…好き、で…す。」

ドッキューン
心臓を撃たれたような感覚だ。
今ならあの芸人が
『惚れて◯うやろぉー!!』
と言った気持ちがわかる。
人生で一番嬉しいかも。
うん。もう死ねるぞ、俺。

「じゃ、別れない。」

と言うより別れる理由がない。

「何でですかっ」

「好きなのに別れる必要ないだろ」

俺が言うと美穂は黙り込んだ。
美穂なりに考えがあるのだろうけど
別れたくないのに
別れなくていいと思うから。
好きなら一緒にいればいいし
嫌いなら別れればいい。
そう思うから。

「先輩…。」

え、やばい殴られるかも…。