今日の帰り、先輩がトラックに
ひかれそうになった。
あれはやっぱり
私のせいだったのかな。

私は血の繋がった人が誰もいない。
理由は分からない。
でも、今までの義理の親や、
兄弟も亡くなってしまったり
怪我をしたりすることが
とても多い。

この事を知っているのは
今の義理の姉さんだけだ。
だから、この前のような事が
起こった時に時々、相談している。
このまま一緒にいたほうがいいのか
それとも離れたほうがいいのか。

コンコンッ

姉さんの部屋にノックする。

「あい〜入っていいよ〜」

姉さんの声だ。
ドアを開けて入ると勉強机に
三角座りしてパソコンで
カタカタと何かしている。
相変わらず部屋は汚い。
姉さんの名前は夢波、大学生で
頭が凄くいい。
身長が高く顔も綺麗だ。
しかし長い髪はボッサボサで
残念な事に…オタクだ…。

「ん、美穂ちゃんめずらしいね〜
どーしたの〜?」

姉さんはパソコンに
向かったまま言う。

「む、夢波さん、この前私の
友達がトラックに
轢かれそうになったんです。」

カタンッ

姉さんがパソコンを閉じて
こっちを向いた。

「美穂ちゃん…」

真剣な目で姉さんが言った。

「お姉ちゃんって呼んでっ」

姉さんが言った…。
そんな事言ってる場合ですか…

「んで、どーしたのだっけ〜?」

聞き流していたようだったので
私はもう一度説明した。

「なるほどねぇ〜」

そう言って椅子でグルグルと
高速回転している。

ゴテンッ

椅子から振り落とされた。
そして寝そべったまま口を開いた。

「その人は本当に大切な人なの〜?」

私は頷いた。

「そっかぁ。私はその人の事を
全然知らないからなぁ〜。
命をかけて一緒にいる
価値がある人なの?」

姉さんの質問に
私は黙り込んだ。

〝命をかける〟

もしこの〝命〟が
私の命ならいくらでも
かけてあげられる。
でもこの場合の〝命〟は
蓮司先輩の命だ。
私だけでは決められない。

「ま、1人じゃ決められないよね〜」

姉さんが言った。

プルルル プルルル プルルル

私の携帯がなった。
岡野だ。

「もしもし」

『もしもしっ美穂ちんっ
西病院来いっ
佐原先輩が事故ったんだっ』

蓮司先輩が事故…!?
どうしよう…行かなきゃっ

「分かった」

私が立ち上がると
姉さんも立ち上がった。

「聞こえてたよ、まずいね
早く行こう。」

姉さんは長いコートを着て
部屋を出た。
え、髪、直さないの!?

私もついていく。
姉さんは大学生だから
車も持っている。
階段を降りると
お母さんとお父さんが
晩ご飯の用意をしていた。

「ママ、パパ、ちょっと
美穂ちゃんとドライブしてくる〜」

そう言って玄関を出た。
外は暗くなってきていて
少し肌寒い

「行き先はっ?」

姉さんが車に乗ってから言った。
私も乗って言う。

「西病院ですっ」

エンジンをかけて走り出す。