昼休みが来た。
いつものように
蓮司先輩とお弁当を食べる。

しかし今朝の事で
岡野はクラスで
孤立してしまった。
こうなったのには
私にも原因があるから
一緒に食べようと誘った。
すると岡野は笑顔で
「おう!」と言った。

笑ったその顔は
純粋な子供みたいで
本当に可愛かった。


屋上に上がると
ベンチが空いていて
2人で座った。
少しすると蓮司先輩が
来て、また岡野に謝っていた。
岡野は少し戸惑っていたが、
笑顔で

「大丈夫ですって!」

と言っていた。
ベンチには左から
岡野、蓮司先輩、私
の順番で座っている。
岡野は本当に蓮司先輩が
好きなようで
猛アピールしている。

「先輩!この卵焼き、
凄くないですか?
ハート型なんですっ!」

岡野は自分の弁当の卵焼きを
箸でもって見せる。

「おおっ!すっげぇなコレ!
自分で作ったのか?」

蓮司先輩も興奮して
聞いていた。
私の弁当は、普通の弁当だ
人に自慢するような
ものは入っていない。

「お前のそれ何?」

蓮司先輩が指さして
聞いてきた。

「アスパラベーコンです。」

誰でも作れる物で
何の特徴もない。
もう少し頑張って
作ればよかった。
と、少し後悔する。

「貰っていい?」

蓮司先輩は言った
味は普通に美味しい
…はずだ。
私は頷いた。
すると蓮司先輩は
口を開けてこっちを向く。

「何してるんですか、
早く取ってください。」

私が言うと先輩は
少し顔を赤らめて

「ばっか、俺
箸持ってねぇんだよ!」

なるほど、そういう事か。
で?どうしろと?
私が食べさせるというのかっ
それはつまり、か、間接キス…

蓮司先輩は口を開けている。
私はアスパラベーコンを
箸でとり、先輩の口に
持っていく。
先輩がパクッと食べた。

「うまっ!お前いつも
こんなの食ってんのかよ!」

先輩がこっちを向いた。
私は顔が赤くなるのを感じ、
下を向く。
なのに蓮司先輩は
下を向いてる私の顔を
覗き込んで言う

「大丈夫か?」

わたしは腕で顔を隠した。
先輩は顔を戻して
パンを食べながら言う

「俺さ、家に弟2人と
妹1人いるから、
親に弁当とかあまり
作ってもらった事ねぇの。
だから、他の人の
弁当とか見ると
ちょっと羨ましい。」

しまった…
岡野の事を忘れていた。
岡野はこっちを見て
睨んでいる。

そのあと岡野は先輩
に卵焼きを箸であげようとしている。
それを先輩が食べた。


チクッ

心臓に何か刺さった。
触ってみたが、何もない。
でも痛い。針のようなものが
ずっと刺さっているようだ。

次の休み時間に保健室に
行ってみたが、その時には
痛みは無くなっていた。

何だったんだろう。

今日は裏路地を通って帰ろう。