友と目指した全国制覇

そして翌日、宿舎のテレビで甲子園の試合を観戦していた。その試合は秋田代表 対 埼玉代表の試合だった。俺は感じたんだ。俺達が決勝まで進んだら、相手はこの試合の勝者だろうと。秋田、埼玉のエースは共にMAX150kmの大会注目投手。両校の四番は共に高校通算60本塁打以上の強打者だった。もちろん、その他も並以上の選手ばかりだ。事実上の決勝戦だと思ったのは俺だけではないだろう。緊迫した試合は0-0のまま延長戦となった。試合が動いたのは延長11回表の1アウトからだった。秋田の三番打者の打った打球は甲子園の魔物、浜風にのってレフトスタンドに吸い込まれた。埼玉代表チームもなんとか踏ん張り1-0で攻撃に移った。しかし簡単に2アウトを取られ最大のピンチを迎えた。埼玉代表は代打に背番号15番の一年生を起用した。俺は埼玉代表の監督の考えが理解できなかった。諦めたのだろうと正直思っていたその時、その一年生は信じられない動きをした。投手が投球動作に入るとなんとバントの構えをしたのだ。この場面でセーフティバントとは。それに独断ではなく、監督の指示のようだった。転がったボールはサードの正面。