恐怖を感じたまま甲子園での一回戦は始まろうとしていた。相手は圧倒的な力で滋賀県大会を勝ち上がってきた。俺は不安な気持ちを裕也に打ち明けた。すると裕也が言った。「俺もあいつは怖い。でもここまで来たらやるしかないだろ。俺はお前を信じて投げる。だからお前は俺を信じてリードしろ。」俺は思った。俺には裕也がいる。そして仲間がいる。一人でビビっていたのが馬鹿らしくなった。そして試合は始まった。マウンドに裕也が上がる。俺は静かに腰を下ろした。「練習7球(審判)」裕也が投球動作に入る。球場全体が裕也を見つめていた。ボールが俺のミットに吸い込まれた。球場からは驚きの声が聞こえた。裕也も全国に通用する東京No.1の投手だ。前評判もあり、裕也を見に来た人も少なくはなかっただろう。しかし球場全体を驚かせたのは先頭打者への初球だろう。俺の要求道理に外角低めにズバッと来たストレート。「ストライーク(審判)」バックスクリーンには「149」と表示された。裕也は笑った。俺は裕也の気迫に圧倒されそうになった。この日の裕也は正に真のエースだった。迎えた滋賀代表の怪物一年生を打席に迎えた。俺はタイムをとり、裕也に駆け寄った。俺は裕也に「全部ストレートだ」と言った。すると裕也が笑顔で言った。「打たれても知らねぇぞ」。しかし滋賀の怪物は裕也の気迫に完全に圧されていた。そして試合は終わった。3-0で勝利した。東京No.1エースは滋賀の怪物を完全に打ち取った。そして俺達は全国制覇にまた一歩近づいたんだ。