高校野球の聖地。甲子園球場に乗り込んだ俺達は、二日目に甲子園練習を済ませて、対戦に備えた。初戦は滋賀の代表校だった。試合は大会四日目の第二試合。緊張はしていなかった。監督の指示で、俺と裕也は滋賀県大会の決勝のビデオで相手の配球やバッティングをみながら作戦会議をした。正直、滋賀のレベルは毎年並以下だ。作戦を考える必要なんてない。と思ったその時だった。信じられない光景を目にした。背番号10番を付けた小さな少年が打席に立っていた。彼は相手ピッチャーの投げた140kmを超えるストレートをあっという間にバックスクリーンに弾き返した。打った瞬間センターライナーだと思った。「怪物だ」俺はそう思った。そしてマウンドに立った彼に更に衝撃をうけた。先頭打者への初球、内角低めのストレート。素晴らしいコースだった。そんなことよりも驚いたのは、スピードガンの数字だ。「146km」直ぐに選手名簿を調べると彼はまだ1年生だった。同じ歳なのに…全国には凄い奴がいた。俺は対戦相手に対して初めて恐怖心を感じたんだ。