俺は中学の時に全国大会の出場経験もある強豪のクラブチームに入部した。小学生の時に全国大会に出場したという事もあり、できるだけレベルの高いチームでやりたかった。そのチームには小学生の時の先輩が多く所属していたので不安はなかった。ある日の練習中に監督から新入部員の紹介があった。俺は顔を見てわかった。佐藤 裕也。小学生の時によく練習試合をしていたチームのエースピッチャー。俺に言わせれば「天才」であり「怪物」だった。投球術で見れば天才、スピードで見れば怪物と言ったところだろう。裕也は俺の事を覚えていた。俺は一度だけ裕也からホームランを打った事がある。東京都大会の決勝戦だった。7回裏3-0の3点ビハインドだった。ランナー満塁のチャンスに打席に立った俺は無心でバットを振った。当たった感触を感じないほどミートした打球はライナーでホームランネットを越えた。サヨナラホームラン。俺は大きくガッツポーズした。その時の裕也は泣いていた。裕也は俺に「今度は同じチームでよかったよ」と言った。正直嬉しかった。はっきり言ってあのホームランは奇跡だった。実力は明らかに裕也が上。あの時満塁になったのもエラーがあったからで、実際は全て打ち取られて