綺麗なんて言葉はちょっとおかしいかもしれない。
綺麗っていうよりは、そこにいても違和感がなくて…暗闇に紛れていってしまいそうだ。
『…綺麗だ、本当に』
そう暗闇の中から呟く。
噛み締めるようにしっかりと。
鷹巳はポケットの中からタバコをもう一本取り出す。
あ…
いつものように下に落とすのかな、と思ってあたしは拾いに行こうとした。勝手だけど、海は汚しちゃ駄目。
だけどあたしが拾いに行く前に、鷹巳はいつものようにタバコを下に落とさずにケースのようなものに、揉み消してしまっていた。
『?』
あたしは不思議がってに鷹巳を見つめた。
『綺麗なものは汚しちゃいけない。これ、鉄則』
視線を合わせずにライターをカチカチとやって火をつける。
オレンジの向こうで揺れる瞳。
オレンジが消えると、また周りは真っ暗になる。