『…俺はよぉ、信じられねぇかもしれねぇが、捕まる少し前まではちゃんと仕事もしてたし、真面目に生きてたんだ…。けど失敗して、クビになってよぉ…』
いきなり、人生を語りだしたそいつに、俺はなぜか黙って耳を傾けた。
『そっからはもうなんのやる気も起きなくてなァ……まあ、この有り様を見ればだいたい想像つくだろ?』
そう言って、笑う。
だけど、うまく笑えてはいなかった。
俺はただそいつを見つめた。
世の中は、うまくいかないことばかりだ。
一度挫折してしまえば、堕ちていくことの方が多い。
『誰かの為に何かをしてるとき、人は幸せなんじゃねぇかな…』
ぽつり。
なんだか胸の奥が切なくなるような声で。
いつかの、想い出を見つめるように、そいつは遠くを見つめていた。