『…行く必要ない』
あたしが凛と呟くと、鷹巳は口にくわえた煙草を右手で離して、視線だけをこっちに向けた。
『もし…、それが間違いでもあたしは戻るつもりはもう……ないから…』
泣きそうになるのを堪えて、自分の気持ちを言葉に絞り出す。
『…ずっと、待ってたんだよ?ずっと…探してた……』
あなたと別れてから。
あなたのことを。
ずっと会いたかったから…。
『……刑務所に入ってたんだ…』
鷹巳が小さな声で呟いた。
煙草を指先に持ち、手をぶら下げて俯く。
『…知ってる。聞いた』
鷹巳は顔をあげず、ずっと俯いたまま、
『…そうか』
申し訳なさそうに口にした。
ふと思った。
もしかしたら鷹巳は自分が、“刑務所”に入っていたことを気にしているのかもしれない。
別れたのは――あたしの為だった。シンはそう言ってた。
そんなのありえないと思うけど…
そんなの信じられないけど…
そんなの自惚れすぎだけど…。
『………もう飽きたって、言ってたよね?』
鷹巳は顔をあげた。だけど、あたしの目をじっと真剣に見てくるだけで、黙ったままだった。