ガタッとドアが開き、あいつが入って来た。
こいつに会ったのは…あの日だけ。
それ以来、だ。
本当は俺にとっちゃ、遠い奴。
俺らみたいな人間の間じゃ、めちゃくちゃ有名で。
知らない奴なんかいない…。
たった16歳で、総長になった梶貴鷹巳。
それは、有名すぎる事柄であり、族間を騒がせた。
最初の成り立ての頃…こいつを甘く見て、潰しにかかるチームはいくつもあった。
だけど……みんな見事に潰された。
そしてまた、有名になっていった。
俺だって、足元にも及ばない。
遠い遠い存在に思えてた。
だけど…優梨に出会ってからは違う。優梨の側にいると、なぜかこいつを身近に感じる。
俺より年下なはずだけど、俺なんかよりずっと上に見えていた鷹巳が…ただの19歳に思えて。
ただの、人間に思えた。
親近感すら沸いた……。
それはきっと…
俺らが同じ人を、好きになっているからかもしれない。