唇が離れて……


だけど、違った。



それで終わり、だった。




『…シン?』



あたしは不思議に思って問い掛けた。




『ごめん。読書の邪魔したな?読んでええよ』



にっこり、笑ってあたしにそう告げた。




別にいいのに…



そう思いながら、便所行ってくるな!と腰をあげ、玄関の方へ歩いていったシンの後ろ姿を眺めてた。



あたしは物足りなさを感じながら、仕方ないから文庫本に手をつけた。




不思議、だった。



だけどそのあとはいつも通り、くっついて来たりしたから、あまり気に止めないことにした。



ただ、執拗にシンが“優梨”ってあたしの名前を何度も呼ぶのが気になったけど…なんだか時々せつなげだったけど…

『シン?』と呼び返すと、『ん?』って優しく笑うから……特に気にしなかったんだ。