『えっ、じゃあなんて…?』
戸惑うのは、当然だ。
『本当は慎斗』
少し強張った顔の由美子に、あたしははっきりと言った。
同時に由美子の顔がもっと強張ったのは、すぐにわかった。
思い当たる人間を見つけたんだ。
『…本当は榊原慎斗だよ……』
消えそうな声で、でも消えないように精一杯その名前を呟いた。
由美子は固まっていた。…しょうがないよね。
『……榊原、慎斗…って……なんで………まだ“梶貴鷹巳”が忘れられないの……?』
どうしても何かで繋がっていたかったんだ、由美子はそう思ったのかもしれない。…それも仕方ない。
首を横にフルフルと振った。
『出会いは偶然だったの…』
――偶然、出会ったの。