『シンさん、て人と付き合ってるんだ?』
教室に2人だけなんて、とても静かだった。
『うん…』
『まさか付き合ってるとは、思わなかったなぁ』
鷹巳のことまだ忘れられないと思ってたから、
そんな声がどっかから聞こえてくるようだった。
『その人のせいなんでしょ?優梨が笑顔になったのは』
にっけり、綺麗に微笑む由美子に胸の奥から何かが込み上げてくる。
どうしてか…淋しげにも見えた。
『いい人に出会えてよかったね!今度は――』
『シン、じゃないの』
緊張して、声が震えた。
『えっ?』
『本当はシンて名前じゃないんだ…』
嘘はつきたくない。
ぎゅっと目をつぶって、拳を握った。決心を固める。