「……だいたい私、そんな簡単に触らせたりしないし……。」
「わかってますよ、だって先輩、処女……」
「おい!今何時だと思ってる!」
時刻は朝の8時半。
しかも、今日は天皇誕生日。
「冗談はさておき、先輩はそういう風に教えらてますもんね?」
「教えられてる?」
「長門さんの匂いが染み付いてるんですよ、貴女には。」
「ハル君の匂い?」
「マーキングでしょうね。」
「ハル君が?私にマーキング?」
うーん、どちらかと言うと
いっつも追いかけてたのは私の方だし、
ハル君は私に余り興味が無かったし。
「……そうですよ。例えばまずコーヒー。」
「コーヒー?」
「コーヒーは絶対に食後。
食事中は水しか飲まない。
しかも、コーヒーはブラック。」
……そうなのだ。女だから甘い方がいいって勘違いされて、ミルクと砂糖を入れてくる奴がいたが、正直うんざりしていた。
私は絶対にブラック。
それに食事中はジュース厳禁。
「朝見るのはNHK。
朝食はスープや味噌汁から先に食べる…
全部、長門さんと同じですよ……」
……それは、仕方がないだろう。
産まれたときからずっと一緒だったんだ。生活パターンは自然と似てくる。
それに、彼は知らないが……。
「待って、なんでハル君のこともそんなに詳しいの?」
「まあ、見たんで。」
「ん?」
「そういうわけで、先輩は無意識のうちに調教されてるんです。あの男の影がいつもふらつく……」
入家君、そんな真面目な顔をしないでよ……
「気に入らねぇ……」
……なんでそんないじけた仔犬みたいな顔するんだ?
「俺は、確かに貴女に出会って1年経ってないけど」
……入家君、私、困るんだよ……
「俺はずっと片想いで、先輩のこと
全然理解出来てないけど」
……君のそんな辛そうな顔を見ると、困るんだよ……
「……俺は先輩に振り回されるの
慣れてるんで……」
……私は弱いんだよ、君のその困り顔には……
「……早く俺のこと好きになって下さい、ね?」
「……入家君……顔、洗ってきていいですか?」
……忘れてないよ、私の顔のベッタリいちごジャム……

