「えっ……」


いや、何が起きた?
信じられない?顔面にイチゴジャムがべったりだ……?

床にトーストがゆっくりと滑るように落ちた。




「……えっと、食べ物を無駄にしては……いけませんよ……入家君……」



……いや、そこじゃねぇだろ、わたし!




「……本当はコーヒーをかけてやろうかと思ったんですけど、まあとっさの理性が働いて。」



君の左側にあるマグカップに注がれたコーヒーのことかしら?湯気がたっているわよ?


「……信じられない。パイ投げならぬトースト投げ?」



「おめでとうございます。」




……なに、呑気な顔してんのよ!



「ありえない。
振られた腹いせにDV?
ちびっこDV?」

「……先輩、ちょっと、ありえなかったんで……俺のこと振るとか。」



……亜弓ちゃんに聞かせたいぜ。これが、君が追い求める学園の皇子様の本性だぜ。



「……なんなの、その台詞?
私はね、本気よ。だって今まで ずっとハル君しか見てなかったの。
正直に言うけど、入家君のことなんか
全く眼中になかったの。」


「……それ、本気で言ってます?」


「当たり前でしょ。」




「気付いてないんですか?」




「何に?」




「……だから、お子様だって言われるんですよ……」



おい、なんの話だ?
そして、コーヒーは飲むな。怖いだろーが。




「先輩、とっくに俺のこと好きですよ……」