「あのね、先輩。普通、
恋人を起こすときってもっと甘いものでしょう?キスとかするんでしょう?」
やれやれと疲れ顏の入家 皐月はトーストにジャムを塗りながら
彼女をみる。
「……入家君って恋人に理想求めすぎだよね。
トレンディかよ?」
フォークでサラダを突く彼女は言う。
「だいたいさあ、私ったら気付いちゃたわけなんだよね」
「なんですかー?」
……どうやら、朝が弱いのは本当らしい
いつもの半分ほどしか目が開いていない……
「……私はさあ、確かにハル君のこと、好きじゃなかったかもしれない……
恋じゃなかったのかもしれない……」
「いや、確実に恋じゃないでしょ」
……いいから、黙って話を聞け!!
「……でも、さあ、それが別に
入家君のことが好きってことにならないでしょう?
なんか、昨日はそういう流れになってたけど。」
私が話し終わる前に
入家君はトーストを食べずに皿の上に置いた。
「もしかして……俺、振られてます?」
「……もしかしなくても振ってるわ」
「へえー……」
カタカタと震える音がリビングに響く?
……ん?カタカタ?
「……おっりゃあー!!」
その時、入家 皐月が右手に持っていたもの……それがいちごジャムたっぷりの
熱々トーストだった
ということ、だけを記憶している。

