それから、今日から私達が泊まることになっている別荘へと向かった。
先輩の運転する軽自動車に揺られながら、段々と景色が自然豊かになっていくのを窓越しに眺めた。
美紅は疲れたらしく、後部座席で眠ってしまっていた。
ふふ。寝顔が天使。
「それで、」
「え?」
突然、隣で黙って運転していた先輩が声をかけてきて一瞬びっくりする。
「それで、西藤お前、結婚は?」
「何ですか、その今さらな質問。」
「いや、一応な。」
私は笑いながら、隣の先輩を見て答えた。
「多分結婚とか私には縁のないものなんだと思います。」
「おいおい、ここはご縁の国島根だぞ。」
「じゃあ、少しは期待しておきます。」
二人とも笑い合った。
それから目的地までの道のりは、ほぼ先輩の親バカトークで盛り上がった。
三人のお父さんである先輩は、大学時代の楽しい面影を残しつつ、しっかりとお父さんになっていた。
そんなこんなで目的地の別荘に着いた。
それは本当に山に囲まれた自然のなかのコテージだった。
周りにはほぼ家がない。
「結構良いとこだろ。」
「聞いてたよりすごく自然豊かな所ですけど、すごく素敵です。」
「だろ?ま、ちょっと場所的に不便なとこはあるけど思いっきりくつろげるぞ。」
そう言いながら先輩は、眠っていた美紅を抱っこすると…
「とりあえず荷物置いてから、飯とかのこと説明するわ。」
「はい。」
目が覚めて、素敵なコテージを目にした美紅は先輩に抱っこされたまま、はしゃいでいた。
その後を荷物を持ってついていった。
コテージの中も山小屋風ですごく素敵だった。
はぁ。来て良かった。
それから、荷物を置いた私と美紅を連れて先輩は歩いてある場所に案内してくれた。
そこで私の幸せなテンションをガタ落ちさせる出会いが待っていた。
それはコテージから歩いて15分くらいの所にある小さなレストランだった。



