私は恐る恐る先輩に尋ねた。
そして先輩はちょっと照れたような顔で
「いや、実は…」
先輩の話によると、私の着信に気づいてかけ直したけど電話にでない私を心配に思い、夜中このコテージに様子を見に来てみたらしい。
「いやぁ、無駄足だったわ。停電しとるに、えらい仲良うしとるけん。」
そう茶化すように笑っていった先輩は、
“影響されて俺も家帰ったら嫁さんと頑張ってしまったわ。”と要らぬ報告までしてくれた。
最悪よ。
まさか先輩が昨日、ここに来たなんて…
それから私は暫く、2階の部屋へ閉じこもったのだった。
ーーーーーー………
「美紅、お土産見に行こーや。」
「うん♪おっちゃん、抱っこー。」
「よし!お兄ちゃんが抱っこしちゃーわ。」
結局、高井先輩は美紅にずっとおっちゃん呼びされたままだった。
帰ったら菜見子に教えてあげなきゃね。
大爆笑だわ、きっと。
そう。今日は私と美紅が東京に帰る日。
空港まで見送りに来てくれた高井先輩。
そして…
「台風で散々だったな、旅行。」
「はい。でも、いい思い出になりました。」
あなたとの思い出も。
島根にきて、そういう縁に出逢ったってことで。
「・・・」
沈黙が流れる。
「忘れーなよ。」
「え?」
その沈黙を破った彼は、
「花嫁修業。」
「え、それって…」
聞き返した私の鼻を軽くつまんだ彼は、意地悪な笑みで…
「俺んとこに嫁、来るんだろ?」
嫌とは言わない私の心が分かってるのか、
彼はもう決めたとばかりに言いきった。
「私、子どもと田んぼとか入るの夢なの。」
「俺の実家、田んぼやっとるから安心しろ。」
二人で笑い合った。
そして、軽く触れるだけのキスをした。
東京から遠く離れた、ご縁の国島根で…
素敵な出逢いが私に巡ってきた。
*end*



