しっかりしなきゃ、しっかりしなきゃ。
そう言い聞かせて、苦しそうな美紅の熱いほっぺたを撫でると私はふと、ある人の顔が浮かんだ。
あ、あの人なら…
あの人になんてこれ以上頼るのは御免なんて意地を張ってる場合じゃない。
「美紅、もうちょっと我慢して待ってて。」
そう言って、寝室を飛び出した。
玄関で靴を履こうとしゃがんだその時、
ーーーーーードォーンバリバリバリ。。
激しい稲光とともに大きな雷が轟いた。
「キャッー」
小さいときから雷は一番苦手で…
恐怖で身を縮めた。
と、その時だった。
ーーーーガチャッ
「おい、大丈夫かっ!?」
ここ最近で一番ムカついていた声だったはずなのに…
「な、永瀬さんっ…」
今、一番頼りたかった声が聞こえて、私は何も考えられないまま、その人に抱きついた。
抱きついたその人は、雨に濡れてびしょ濡れだった。
気づくと、私は泣いていた。
何年ぶりだろう、人前で泣いてしまったのは。
「どうしよ、美紅が、…美紅、熱があって、
薬…でも、何にも欲しくないって…」
雷の恐怖と、美紅の状態の焦りでうまく喋ることができない。
すると、私の両肩を掴むと永瀬さんは私の顔を覗き込んだ。
「いいか、落ち着け。なっ?
ほら、もう大丈夫だけん。俺がおるだろ?」
まるで子供に言い聞かせるかのように、永瀬さんの声は私をどんどん落ち着かせてくれた。
あんなに私をバカにしていた人とは思えないくらい優しくて…何かよくわかんないけど、ホッとした。
それから、私は美紅が熱があることを説明した。
それから、二人で2階の美紅のところへ。
永瀬さんは大きい手を美紅のおでこに当てて、 “えらそうだな…”そう呟く。
こんなに苦しそうにしてる美紅に“偉そう”って
…
「ちょ、偉そうって…」
私がムッとしたのが分かったのか、永瀬さんはああと思いついたように私にこう言った。
「悪かった。“えらそう”ってそういう意味じゃない。こっちじゃその、何だ…“つらそう”って意味だ。」
「え、そう…なんですか。
あ、ごめんなさい…私。」
勘違いしたことに慌てて謝った私に、永瀬さんは、“方言は難しいからな”と小さく笑った。
ここへ来て初めて笑った顔を見た。
こんなときなのに、ちょっとキュンとしてしまった。
私、変なの。
「とりあえず、汗かいとるから着替えさしてやれるか?俺は何か食えそうなもん作る。」
「分かりました。
でも、美紅食べれないって…」
立ち上がって部屋を出ようとした永瀬さんは、私を振り返り…
「ま、俺にまかせとけや。」
そう言ってまた、優しく笑った。
私はまたときめいた胸を抑えつつ、美紅の汗をかいた服を着替えさせ始めた。



