「かりん、草野と桃野さんがくっついたの知ってる?」
ハンバーガーショップでかりんに訊く。
「え! 何それ知らなかった~・・・・・・って、草野じゃん! ・・・・・・紅、失恋、だね・・・・・・」
かりんは私の唯一の親友。内気な私に社交的なかりん。正反対だけど、気が合う。草野の事を好きなのを打ち明けたのはかりんだけだ。
「悲しい?」
「当たり前じゃん。・・・・・・っ」
涙があふれてきた。
「大丈夫? 紅を無視して桃野さんと付き合うなんて草野翔め、女の子を見る目がない! こうなったら・・・・・・」
「・・・・・・こうなったら?」
「すんっっごく可愛くなって見返してやれ! そして奪うのだ!」
「う、奪う? 何を?」
「決まってんじゃん。・・・・・・ふふ」
「え・・・・・・?」
「桃野さん・・・・・・桃野でいいや。桃野から告ったんだよ。来る者拒まずでOKして、草野が桃野さんの事を好きとは限らないんだから。絶対、紅の方がお似合いだよ。だから、もっと可愛くなってアピって、告れば、絶対OKしてくれるよ」
「えぇー・・・・・・そうかなぁ」
「そうだよ! じゃぁ、早く!」
 かりんが私の手を引っ張り、飲みかけの抹茶ラテが入った温かいカップを持って半強制的にハンバーガーショップを出た。

 着いたのはかりんの家。
 「何・・・・・・するの?」
「紅、可愛くなりたいでしょ。メイクして、髪も巻いて!」
 顔と髪をいじられること30分。メイクなんてされるの、初めて。
 「じゃーん! さぁ、鏡を見て」
 差し出された鏡を見ると・・・・・・私は自分の顔なのに、とっても可愛くなっていた。パッチリとした瞳。くるくるのまつ毛。ほんのりピンクの頬。たっぷりグロスのついたくちびる。ゆるくふわふわに巻かれた髪の毛。
 「紅、超カワイイ! 紅は生まれつき茶髪だから明るくていいよね~。あたしなんか真っ黒だから、ちょっとダサいし・・・・・・」
「すごぉーい・・・・・・」
「でしょぉ? 磨けば光るんだよ。先生にばれないように薄くメイクして髪巻いて明日学校行ってみようよ。絶対注目の的」
「そっ、そうかなぁ」
 ぬるくなってきた抹茶ラテを一口飲んだ。