うつらふお姫様とちひさき約束


太陽が傾き始めた頃。
連れて行かれた先は、ちいさなイタリアンレストラン。
外観も内装も雰囲気も、おしゃれというよりは可愛らしい感じ。
奥まった窓際の席に案内される。

「緊張しなくてもいいぞ、ここはそんなに堅苦しい店じゃないから。」

そう言われたけど、デートでちゃんとしたお店に来るのは初めてだから、やっぱり少し緊張する。

前菜に始まるコースメニューは、どれも目に鮮やかなだけでなく、味もすばらしかった。
美味しいだけじゃなくて、心も豊かになるような温かみを感じる。
向かい合う彼と目が合う度に、微笑みあって、心が満たされる幸せな時間。

メインのお皿が片付けられドルチェを待っていると、かずくんが突然不機嫌そうに眉を顰めた。

「本当に来たよ・・・あ、まゆ、振り返らなくていい。」

そう言われたけど気になって、遠慮がちに後ろを見ると、そこには予想外の人。

「やぁ、まゆ。二十歳、おめでとう。」

かずくんとは正反対に上機嫌に笑う紘明さんがいた。
そしてもう1人。
紘明さんの半歩後ろに立つ、女の人・・・長い黒髪と綺麗に引かれた口紅。たぶん、カーネーションを抱いていたあの女性だ。

「まゆりさん、おめでとう。」

そう言ってミニブーケを差し出されたけれど、受け取る理由が見つからない。

「まゆ、もらっておけ。オレとこいつからだ。」

困惑しているあたしを見て、紘明さんが面白そうに笑う。

「え・・・?」