うつらふお姫様とちひさき約束


結局、かずくんには何も聞けぬまま桜も散り、ゴールデンウィークが目の前だ。
あたしはしっかりカレンダー通りに休みだけど、かずくんはもちろん規則正しくお仕事なわけで。
それはそれで仕方ないとわかっているけど、残念なのはあたしの誕生日も勤務日ってことだ。
大型連休が終わった翌週の金曜日が、記念すべき20歳の誕生日。
かずくんは、あたしの誕生日を覚えているだろうか・・・。

4月最終日、かずくんはお休みで、前日の夕方一緒に食事をしてそのままかずくんの部屋に泊まった。
昨日も過剰なほどのスキンシップはあったけど、その先へ行くような甘い雰囲気にはならず、清い夜を過ごした。
連休後半は家族で旅行に行くことになっているから、次に会うのは連休明けになりそうだ。

夜も遅くならないうちに、かずくんはあたしを家まで送ってくれる。

「お土産買ってくるからね!何がいい?」

「ん?そうだなぁ・・・まゆが選ぶものならなんでもいいよ。とにかく楽しんでおいで。」

助手席のシートに思い切り体を預けて、見るともなしに空を見上げながら問うと、かずくんも前を向いたまま答えた。

家の前に着くと、かずくんはシートベルトを外した。
珍しく降りるのかな?なんて思っていたら、助手席に片手をついてあたしの方へ身を乗り出してきた。

「誕生日、楽しみにしとけ。」

そう言ってしっとりと口づけしたあと、ぺろりとあたしの唇を一舐めした。

誕生日を覚えていてくれたと喜んだのも束の間、初めてされたいつもと違うキスで、あたしの体温は一気に上昇して、心臓が壊れそうなくらい激しく動き出す。
真っ赤であろうあたしの頬を撫でて「おやすみ」と言うと、あたしのシートベルトも外し、行けとばかりに背中を押す。
あたしはされるがままに車から降りるとよたよたと玄関へ向かい、ドアに手を掛けたところで後ろを振り返った。
かずくんは憎らしいくらい普通に、にこりと微笑んで片手をあげた。
目も合わせられないままドアの内側へ体を滑り込ませると、車が走り去る音がした。

こんなことじゃ、甘い雰囲気どころじゃないよね・・・。

ぎゅっとシャツの胸の部分を掴んであたしは深呼吸を繰り返した。